論理的に英文を解釈するということの一例

Ian HackingのThe taming of chanceの中から一文を選んで、論理的に英文を解釈するということの一例(となると私が僭越ながら考えているもの)について書きたいと思います。

The Taming of Chance (Ideas in Context)

The Taming of Chance (Ideas in Context)

 

 

問題の文

Fourier by no means originated calculations of the probability that a quantity lay within certain limits.

一見したところ

一見したところ、thatは関係代名詞で他動詞layの目的語になっているような感じがします。しかし、それだといくつかおかしいことが出てくるのです。

一つ目は、layの主語がa quantityであるということから生じる問題です。三人称単数ですから、laysとsがついていないといけないはずです。しかし、ついていない。

二つ目の問題は、時制です。この文は主節がoriginatedと過去形になっているので、thatが関係代名詞であるならば、layも過去形であることが普通だと考えられます。しかし、この動詞が他動詞だとすると形はlaidになっていないとおかしい。ということで、thatが関係代名詞であり、layは他動詞であるという解釈には問題があります。

この動詞は自動詞lieの過去形だ

上の考察からこの動詞の原形はlie (横たわる、ある)とならなければならないことがわかります。となるとこのthatは接続詞であるということになります。

じゃあこのthatはなんの役割を

接続詞のthatはどんな役割を持っているのでしょうか。副詞節を作るthatであれば、基本的に何か他の単語と相関的に使われます。この英文の中にはその相関語句がないため、これは名詞節を作るthatであると考えるのが妥当でしょう。

名詞節を作るthatは主語・補語・目的語・同格のうちのどれかの役割を負います。最初の3つはありえません。このthat節以外でSVOが成立しているためです。ということで同格のthatということになります。つまりprobabilityの同格です。辞書を調べてみましょう。同格のthat節をとれる名詞は限られているからです。すると例えば私のOxford Advanced Learner's Dictionaryでは

There is a 60% probability that the population will be infected with the disease.

 という例文が載っているため、問題なさそうです。

結果、和訳は

和訳は以下の通りになります。

フーリエが、ある量がある一定の範囲内にあるという確率の計算を始めたわけではまったくない」

論理的に読むとは

英文法の知識、単語の使われ方に関する知識を使って、その中で整合的な読みをできるような解釈を目指すことに他なりません。詳しく言えば、

こうなんじゃないか?→あれでもそうだとするとここがこうなっていないとだめだぞ→ということはこうか?

という仮説の生成と検証を繰り返して、正しい解釈にたどり着くというイメージです。

最初はこの手続きにとても多くの時間と労力がかかるものですが、繰り返し繰り返しやっていくことで、瞬時に正確にできるようになります。この繰り返しのために、音読をするのが私は最適だと考えています。