【簡単な書評4】Social Learning Theory (Bandura, 1977)

 

Social Learning Theory (Prentice-Hall Series in Social Learning)

Social Learning Theory (Prentice-Hall Series in Social Learning)

 

 

1. Theoretical Perspective これまでの理論の批判と社会学習理論の概要

人の行動を内的な衝動や動機によって説明しようとする理論は批判さらされてきた。行動の種類は多様であるため、その種類一つ一つに動機を想定しないといけないだけでなく、動機だけではある一つの種類の行動の多様性を説明することはできない。加えて、この理論にしたがって、行動上の望ましい変化を起こそうとしても変化を起こすことはできない。予測のできない理論は妥当とはいえない。

一方で、行動主義も批判されるべきである。環境が行動を決定するというが、実際はそうではない。人間の認知と行動と環境の間で相互作用が起きており、その中で人の行動は決まっているのである。また、行動主義が依拠している学習理論も批判の対象となる。学習理論では学習が起こるのは本人が直接先行刺激にさらされて、反応を行い、その結果を体験することによってのみ学習が起こるとされてきた。しかし、それでしか人間が新しい行動を学べないのだとすると、生き残りが難しい。人は直接経験をしなくても、他人の経験を観察することによって学習することができるのである。

2. Origins of Behavior 人の行動の源泉はなにか

人間の行動を生み出すものとして認知が重要である。認知によって人はどのように学習を行うのか。その過程はモデリングと呼ばれ、以下のようなプロセスを経て起こる。

  1. Attentional Process 観察する段階:観察対象となる行動のある特定に特徴に注目する段階。
  2. Retention Process 記憶保持の段階:イメージと言語の二つの表象を用いて観察された行動が記憶される。
  3. Motor Production Process 実際に動いてみる段階:前段階で表象されたコードを行動に置き換えていく。体をこう動かすべきというようなルールで細かい行動を組み合わせて一つの反応を形成する。それをした結果がうまくいくか否かで修正が行われていく。
  4. Motivational Process 動機付けの段階:学習された行動が社会的・個人的な報酬を生み出すことで、その新たな行動が実践される。

従来の行動主義と違って、予期が人間の行動を決めるのに重要なものであると考える。つまり従来の行動主義では環境にある実際の強化子が行動の学習には必要であったが、社会学習理論では報酬の予期があれば行動は学習されると考える。

また、モデリングによって人は新しい行動を生み出すことができる。モデルの人の行動からその行動がしたがっているルールを推論し、モデルとは違う環境においてもそのルールにしたがって行動をすることができる。

3. Antecedent Determinants 人間の行動を引き起こす先行刺激

おもに不安と回避行動に関して、その先行刺激が分析される。基本的には予期という認知に焦点が当たっている。

人は自分のした行動にある結果がともなった時に、もしくは他人がある行動をしてそれにある結果がともなっているのを見た時に、その行動にはその結果が伴うのだという仮説を頭の中で作るようになる。実際にどの行動に関してどの結果が関連づけられて理解されるのか、については様々な要因が関係している。しかしそういった要因から予期が生まれて、それが不安の元になる。

予期の学習が誤って行われ、不必要に高い不安や存在しない脅威に対する不安を持つようになってしまうことがある。これを治すことも可能である。治療に際して重要になってくるのは自己効力感(self-efficacy)である。これは自分にある行動ができるのかに関する信念の度合いである。これが高いと不安や回避行動が減り、環境に対する統制(mastery)が増す。自己効力感は以下の4種類の情報に基づいている。

  1. 実際の成功体験
  2. 代理による経験(他者が成功しているのを観察すること)
  3. 言葉による説得
  4. 身体状態の変化(緊張して体がこわばっていると自己効力感が低くなる、など)

セラピストはクライエントの自己効力感が高まるように工夫することになる。上の情報のうち、1を組み込んだ上で複数を組み合わせれば、自己効力感は高まりやすい。

4. Consequent Determinants 人間の行動を決定する後続刺激

 ある行動が生み出した結果によって、その行動が生起する頻度が高まることを強化というが、人は認知によってこの強化を行うことができる。メインで取り上げられているのは代理による強化と自己評価により強化の二つ。

代理による強化とは、以前に出てきているが、他者のした行動にともなった結果を観察して、それがよい結果ならば、その行動をすればそのよい結果が得られると理解して、その行動を自分でもするようになることを指す。悪い結果であれば、その行動は行われなくなる。

自己評価による強化とは、自分であらかじめ基準を設定し、自分の行いがその基準を満たせば、自分に報酬を与え、達成できなければ罰を与える、というもの。これによって人は自分の行動をある程度統制し、たとえば長い目で見れば利益が出るが今すぐにはなかなか得にならないような行動も続けることができるようになる。

今までの話は、認知のみが強化子として有効であると言っているわけではない。環境や環境にいる他者も重要な要因として考えなければならない。たとえば他者が自分に厳しい基準を課しているのを見て、それと同等の基準を自分に課すというようなモデリングもありえるからである。環境にある要因と認知という要因が相互作用して、人間の行動を決めているのである。

5. Cognitive Control 認知によって自分の行動を統制する

認知とは、イメージ、思考過程、表象の3つを指す。認知も人間の行動を部分的に決定している。たとえば、頭の中にある表象にしたがって、行動したり、自分で決めた基準を満たすように努力をしたり。

言語が認知の中では一番重要な役割を占めている。言語は世界を表すものであり、この間の一致関係がどれだけ担保されているかに、認知が効果的に行動を生み出せるかどうかがかかっている。子どもの言語習得は次の3つの方法で進むようである。つまり、モノマネ、大人の言語活動の観察を通じた文法の推論、そして大人からのフィードバックである。モノマネにはそこまで発達に寄与しない。後ろの二者が発達の上では重要。

認知が人間の行動決定に寄与していることを想定すると、先行刺激ー反応ー後続刺激という直線的な因果の図式で人間の行動を説明することは完全にはできないことがわかる。むしろ、刺激が反応を生み、その反応が環境に変化を与え、そしてそれがさらなる反応を生み、、、と返報的な因果の図式で人間の行動は捕らえられるべきである。加えて、人間の行動を説明する際に、人間の内的な過程と環境と行動の3つの関係をどう考えるのかが問題になるが、この間には相互作用があるか考える方がよい。認知と行動という区別は、この相互作用の存在を考えると実は有効ではない。

6. Reciprocal Determinism 返報的決定論

環境と人間(認知と行動)は互いに依存している。人間が行動をして初めて、環境は環境として人間に影響を与えるようになるし、その逆もまた真である。人間と環境は分離したものではないということだ。

環境は一定数の可能性を持っていると理解するとよい。その可能性の中でどれが実現するかは、人間の行動によって影響を受ける。しかし人間の行動が実現される可能性を決定するわけではない。その確率を高めるだけである。そして環境が人間の行動に対して影響を与えるという時も、この意味である。3つの要因は互いを部分的に決定しあっているのである。

というわけで、人間の自由を行動選択の余地があることと考えるならば、この決定論、つまり返報的決定論は、人間の自由を排除しない。どのような状況であろうと、人間は環境に対して影響を与えることができるのだし、また環境によって人間の行動が100パーセント決定されるわけでもないからだ。

感想

最後の決定論の話はよくわからない。決定されていないように見える。だが、他の認知行動療法家たちと同じように、人間に能動的な地位を与えようとしていることはすごく伝わってくる。

バンデューラがしたこととして、直線的因果律から円環的因果律へ、そして一方向的な因果の方向から相互作用へ、という変化をもたらしたことが挙げられることが多い。この本ではまさにそれが行われている感じがする。しかし、彼が人間の内的な過程としてあげるのは認知だけである。生理学的な変化や情動が人間の行動を決定するシステムとして挙げられてはいない。どのあたりから誰がこれらを入れて考慮するようになったのかは調べる必要がある。